忘れていたわけでもないけど

アイドルのウォッチを続けています。惰性でとしか言えない。

幻想を求めています。どのような幻想かと言うと、「嘘が本当になる瞬間がある」という幻想です。

 

「自分は良いファンではないと思います。私があなたの活動を応援しているのは、あなたが苦しむ姿を見たいからです。こう言うと少し語弊がありますね。つまり、私の性格に少しあなたと近い部分があり抱える悩みにも共通するところがあるから、私は貴方の苦しむ姿を見て、それと闘う姿を見て自分も頑張らねばと力をもらうことができる。それが目的であなたを応援しているのです。貴方の苦しみを生んでいるのは他ならぬアイドルという業種の競争原理でしょう。そこにあるのはあまりにも無味乾燥で残酷な"人気主義"という市場原理。芸能の仕事は常に身一つでその残酷さに触れる仕事な訳です。で、優しいあなたは他人を蹴落とすとか陥れるとか、そうでなくても他人を差し置いて前に出るということが苦手であったり、自分に自信がなくって常に自分の存在価値を自問自答して悩みの迷路に入り込んでしまったりする。それでも後悔の無い人生を送る、と口にし懸命に突き進んでいく強さは羨ましい。けれど、時に痛ましくも感じます。なぜなら多くのことはあなたの努力とは無関係なところで決まっていく。アイドルはとても大きな構造です。あなた方が良く口にするように多くの人が関わり、多くの支えがあって動いている。それは様々な人の思惑が複雑に絡み合って行先が決まっていくということでもあります。人間は大きな構造の前では時に無力です。それは普通の社会人もそうなのですが、少なくとも違うのはあなたがたはそれでも常に夢を語り続けなければならないということです。それを信じて応援してくれる人々のために。いや、何より自分のために。理想とは何もしなければ常に自分から遠ざかっていくものです。自由に夢を語っていた子供たちも、やがて成長して大人になれば自分の人生の残り時間と自分の能力や環境に見合った夢を語るようになります。自然に。そういう人たちはヒーローを求めている。自分の代わりに夢をかなえ続けてくれるヒーローです。アイドルはヒーローでしょうか。必ずしもそうではないですよね。華やかに活動している人はほんの一握りです。それに、やがて卒業というタイミングがやってくる。卒業後も表舞台に立ち続ける人はもっと少ない。歌手という立場でありながら、歌唱力やパフォーマンス力よりも人気で選抜メンバーが決まるため歌唱力やダンススキルを伸ばそうというインセンティブが働きづらい。仕事をもらって舞台やドラマに出ることができればスキルアップのチャンスはあるけれどもそれもまず人気ありきです。そもそも仕事が多岐にわたり多少の才能があったところで一つ一つに割ける時間も限られているから専門で歌やダンスや演技に取り組んでいる人々に太刀打ちできるわけでもない。とても厳しい環境じゃないですか。アイドルを嫌う人はそういう中途半端な部分を批判するのですよね。その批判はある意味正しい。いや、正しくない。正しくないということになっている。コンテンツとしての性質が違うからです。アイドルの目的とは何か、それは『ファンとのコミュニケーションである』。夢を語り活動する人間がいる。それを応援する人がいる。懸命に活動する姿を通して夢や希望を人々に与える、だけではない。時には悩みや苦しみを吐露することもある。で、夢は少しずつ遠ざかっていく。目指してきたのに、どこへ行った?逃げ水ですね。叶わない人が大半です。それでも活動は続く。目標を語る。それを応援する人がいる。時にそれが叶ってみんな喜ぶ。幸せな気持ちになる。楽しいことばかりではない。本当のことばかりではない。苦しいことの方が多い。苦しい中でも力を失わないものがある。メンバーやスタッフやファンとの感情的なつながり。みんな幸せなことばかりではない。苦しい時もある。それでもそれぞれが一歩一歩踏みしめながら人生を生きている。時に救われる瞬間が来る。それをみんなで喜び合う。夢がかなったと言う。これが自分の夢だったんだ、と。それは嘘です。でも本当なんだ。そう言い切れる。そういう瞬間が来る。『幸せなアイドル人生でした』という言葉がラジオから聞こえた。嘘だ。あんなに苦しんでいたじゃないか。あなたのアイドルへの憧れは早い段階で無残に散った。悩んでいた時間の方がずっと長かった。でも、本当なのだろうと思う。本当になるのだ、と思う。自分を応援してくれた仲間やファン、見続けてきてくれた人々のために最後の愛と感謝をこめて、意地を張ってその言葉を言って終わろうと思ったんだろう。それをファンの人たちも分かっているのだろうと思う。嘘だと分かった上で、その言葉を信じるんだろうと思う。それが自分たちの役割だと悟っているんだと思う。ならば、それは本当のことになる。嘘だと分かった上で信じる。それも愛にほかならない。そんなファンが大勢いてくれるなら、本当にアイドルとして幸せだったと言えるじゃん」

 

みたいなことを思っていたのですが、今日まで忘れていました。